さいごのおしばい

今回青森のツアーを組んだ一番の理由は不治の病に倒れた昔からの恩人であり役者の大船さんに会いに行くことでした。覚悟はしていたけど今朝になり突然の訃報。まだ50代でした。ギターを持って雪の降りしきる青森をあてもなく訪ねた15年前、ぼくの歌をたまたまお客さんで聴いて気に入ってくれ、いつしか大船家で家族のようにお世話になり、その後何度も青森を訪れるようになりました。ぼくに友部正人さんを紹介してくれたのも大船さんで、何度か同じステージに立たせてくれたり、11年前にはぼくのライブと大船さんの独り芝居を組み合わせたツーマンショウを青森で企画してくれたりもしました(写真はそのときのポスター)。先週のまんぶるずでのライブ翌日、青森の病院へお見舞いに訪れたとき、個室に移され、体は弱わり、すでに言葉を話せる状態ではなくなっていたけど、変わらず俳優さんらしい綺麗な瞳をしていたので、これから少しずつよくなっていくのかなとひそかに期待していたところでした。落語が大好きで、独特なコミカルなお芝居を普段からしているような面白い人だったので、病室のベッドで喋れなくなっていても、どこか病人の役を面白がって演じてるのでは?と疑ってしまうほどでした。だけどそうじゃないことがわかると急に悲しくなった。このツアーが少し前倒しになって7月頭になり、このタイミングで最後の最後に会えたのは何とも言えない奇跡のようでした。15年前の青森の雪の夜に出会えたときも奇跡のようだったし、こんな奇跡を2回も与えてくれた得体の知れない何かに今は感謝するばかりです。先日の青森ライブで最初と最後にリクエストで歌った歌は「歌星」と「み空」の2曲で、奇しくも大船さんへの少しはやいレクイエムのようでありました。
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