【真黒毛ぼっくすNew Album『バラ色の人生』に寄せて】

先日、真黒毛ぼっくすのボーカル大槻ヒロノリさんのお宅にお邪魔した。外は春の嵐で、大酒呑みの大槻さんはお酒の弱いぼくに付きあってくれ、音楽の話をしながら深夜まで飲んだ。あまりに楽しかった分、案の定、明け方になってぼくは1人で何度も吐いた。雨は激しく降り続いていた。

大槻さんは新しいアルバムのレコ発ライブが延期になったことをとても殘念がっていた。4/4にライブと共にリリースされる予定だった真黒毛ぼっくすニューアルバム『バラ色の人生』。マスタリングはぼくのアルバム『COMPLIANCE』をきっかけに夏秋文尚さんが担当している。この春、踏み出したくても踏み出せない人がたくさんいる中、大槻さんも正にその渦中にいた。行き場をなくした熱情が部屋の中でぽつんと燻っているのは居たたまれなかった。

大槻さんの家には初めてお邪魔したけど、とても居心地がよかった。まずは10階から広々と見渡せる荒川の景色。川の向こうには首都高が行き交う。『バラ色の人生』の裏ジャケットにもなってるこの部屋の窓からの風景はもうすぐビルの建設で見えなくなってしまうらしい。そして壁に並べられたたくさんのCD。大槻さんが今までに聴いてきたであろう音楽、自分のCD棚なんじゃないかと思うくらいにラインナップが似通っていた。おまけにつげ義春の文庫本まで。話が尽きない訳だ。

翌々日は晴天で、ぼくは持ち帰った『バラ色の人生』を自部屋のスピーカーで再生した。最高だった。例え自分を愛することの出来ない人生だったとしても「バラ色の人生」ってフレーズがすべてを肯定してくれてるように晴天に響いた。それは大槻さんの経験とソングライティングの説得力、それを後押しするメンバーの演奏の賜物。これが今年の桜と共にステージで轟いていたらどんなに最高だっただろう。

「もう二度と会えない 決別の北千住駅 改札をくぐり抜け桜吹雪 振り返らず歩いてく」(改札)

時は過ぎゆく。いまはそれぞれの場所で『バラ色の人生』を鳴らし、来るべきときに更に色の濃い『バラ色の人生』レコ発ライブをやってくれたらいいな。