『銀幕の虎vol.6』の共演者 その2

今から5年くらい前の深夜、中野のガード下のひと気のない暗がりで、地べたに座り込んで、長い髪で、無骨にギター弾き語りしてる青年がいた。聴く人は誰もいなかったけれど、気になってぼくは近づいて青年に話しかけた。高円寺無力無善寺でよく歌ってるとかそんな話を聞いたり、ぼくは自分のことを偉そうにたくさん語ってたような気がする。そんなことはすっかり忘れていたが、それから数年後、代々木ブーガルでのイベントに出演した際、あのとき話しかけた青年がこの日共演の水野寝地くんだったことを本人から知らされた。その日のライブで寝地くんはぼくの「でんこちゃん」という歌をとても気に入ってくれ、なぜかすごく悔しがっていた。寝地くんの歌では「ちんこちんこちんこ」とひたすら繰り返す歌が印象的で、ちょっと兄弟かと思った。世の中に反逆したくて仕方なかったときにぼくは「でんこちゃん」みたいな卑猥な曲を書いて半分喜び、半分開き直っていたけど、寝地くんも同じように「ちんこ」というピストルに弾をこめてステージで乱射しているように見えて、見ていて爽快だった。自分よりずっと年下の彼が無骨でユニークなフォークソングをいっぱい作っているのも頼もしかった。昨年末、彼の新譜『喝采』を聴かせてもらい、とてもよかったので今回ぜひイベントに出演してほしいとお願いした。彼の歌声にはときどき殺されそうになるけど、気がついたら気持ちのやわらかいところに迷い込んでいたりする。それが楽しい。がなりたてていても、ほっこりと熱いものが残る。2/12阿佐ヶ谷ハーネス『銀幕の虎』での共演、とても楽しみです。