新しいギターと共に

はじめてギターを買ったのは小学校5年生のときでした。新品のモーリスのフォークギターで、確か2万円くらいで甲府の楽器屋さんで買いました。はじめての自分のギターを持てたことが嬉しくて、毎日弾いてはいろんなコードやアルペジオの奏法をこのギターで覚えていきました。ドレッドノートで鳴りもよく、とても弾きやすかった。中学に入ったある日、二つ上の先輩にこのギターを貸してほしいと言われました。ためらったぼくは断ることができず結局ギターを貸しました。その後ある別の先輩がお前のギターがひどい扱いを受けてるぞと教えてくれました。まさか壊されることはないだろうと思いつつかなり不安な気持ちになりました。そしてしばらくして手元に返ってきたギターは案の定、傷だらけの状態になっていました。そのときのぼくの心境は、大好きで毎日大事にしていた彼女が他の男にレイプされてもう別物にされたかのような心持ちでした。二つ上の先輩で文句も言えず、ひとりで悔しさを噛みしめました。再び戻ってきた大切なギターをぼくはどうしても受け入れることが出来ず、自暴自棄になり、このギターを売ってほしいという先輩に千円で譲ってしまいました。子供ながらにまったく自分のことを守れずにいました。あのときどうするのが正解だったのか未だに考えてしまいます。その後、ギターを失ってしまったぼくはまた新しく買ったギターに愛情を注ぎました。長年苦楽を共にしてきた友のような存在でしたが、そのギターも8年後に自らの手で叩き割ってしまいました。そのときは自分を守れないどころか自分のことをまったく愛せない状態になっていました。毎日自分をいじめることしか考えてませんでした。故にまわりの人やもの、ギターだって愛せるはずもなく。。本当は愛したかったのに。愛していたのに。
今月、久しぶりに新しいギターを買いました。先日岐阜県まで迎えに行ってきました。名前はヴィンセントちゃん。まだ友というより赤ちゃんて感じがします。新しいギターを買うたびにぼくははじめて買ったギターのことを思い出します。もう25年以上前のことだけど。あの頃辛かったのは自分を愛せてない行為に自分で気づけてなかったことかもしれないなとふと思いました。未だに自分のことはうまく守れずにいるけれど、いろんなことに少しは気づけるようになってきて、おんなじような失敗はしないぞと新しいギターを見ながら心に誓うのでした。
今日はこれから吉祥寺にてライブ。新しいギターの色に合わせて、真っ白なカポを買いました。愛情を持って、大切に弾いてきます。

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