町田康さんによる中原中也と萩原朔太郎の朗読・講演会

町田康さんによる中原中也と萩原朔太郎の朗読・講演会に行ってきました。「骨」「サーカス」「帰郷」「汚れつちまつた悲しみに…」なつかしい詩の響きを感じることができました。初めて買った詩集も中原中也と萩原朔太郎だったし、きっと影響は受けてきているのですが、詩とは別に中原中也といえばどうしても思い出してしまうエピソードがあります。今から10年程前、ぼくは中野のマンションで当時の彼女と同棲していたのですが、彼女に他に好きな男ができたことをきっかけにお互いにその部屋を出ることになりました。精神的にかなり辛かったけれど、ぼくは平気なフリをして(半分ヤケになって)先に出て行くことになった彼女の引っ越しを手伝ったりしました。その直後になぜか中原中也を読み返していて、改めて中原中也の年譜を読み、驚愕しました。山口県出身の中原中也が恋人・長谷川泰子と共に上京し同棲していた家に、作家の小林秀雄が中也の留守中たびたび訪ね、やがて中也は小林に長谷川泰子を奪われてしまうという話は有名ですが、そのとき中原と長谷川が同棲していたという家のあたりが、当時ぼくが同棲していた部屋の番地とほぼ一緒だったのです。区画整理のため昔とは番地が変わり正確にはわからないですが、今の中野区中野5丁目48〜53番地のあたりということでした。ブロードウェイの東側の呑み屋の多いじめじめしたあたり。おまけに中原も相当ショックを受けていたにも関わらず、長谷川の引っ越しを無理して手伝ったという。大正十四年の出来事。中原はその後、高円寺に引っ越し、ぼくも高円寺方面に引っ越しをしました。それも後から知った偶然。中原中也はそのときのことを「冬の夜」という詩にしています。ぼくが歌う「おやすみ」「不倫はやめなよ」という歌はそのころ書きました。中原中也というとメルヘンチックでリズムがよくて崇高な詩ばかりですが、そのエピソードを思い出すと、どうしてもネガティブな気持ちになります。どうも他人という気がしない。